奴隷貿易が世界に与えた影響　⑨南北戦争

　黒人奴隷貿易が影響についてシリーズ化してブログに書いています。

今回は黒人奴隷貿易からの影響として、「南北戦争」について説明したいと思います。

南北戦争(1861～1865年)は、下記のアメリカ北部と南部のとの間で行われた戦争で、死者数が約62万人(北軍約36万人、南軍約25.8万人、当時の全人口は約3000万人強）となったアメリカ史上最大死者数をだしました。

・北部/北軍　アメリカ合衆国(北部23州)

・南部/南軍　アメリカ連合国（奴隷制存続を主張する合衆国を脱退した南部11州）

 

なぜ南北戦争が黒人奴隷貿易に影響しているのでしょうか。

まずは、南北戦争の原因を考えてみます。

主な原因は２つあります。
１．北部の保護貿易(新興工業地域)と南部の自由貿易(大規模農業地域)の対立
1-1　南部は産業革命により工業化が発達しているイギリスへ原料となる綿等の農産物供給をすることにより発達。

　この綿花などの栽培は大規模なプランテーションが行われ、その労働力が奴隷なのです。

　奴隷によるプランテーションは非常に生産性が高く、農産物を大量かつ安価に生産でき、世界の工場であるイギリスに輸出することで大きな富を築きました。

　このように南部は国際競争力があり、自由貿易によって発展します。

1-2　北部は新興工業地域でまだ生産性が低い自国製品では進んだ英国製工業製品に太刀打ちでができないため、次のことを考えました。
1-2-a:南部の奴隷がいなくなれば南部の農業生産力が落ち、さらにはイギリスは原料不足というダメージを与えられる。

1-2-b:発展途上の北部には保護貿易※が必要で、なんとしても南部の自由貿易を抑え込み、アメリカは保護貿易にする必要がある。

※保護貿易：発展途上国が自由貿易による弊害を防止し、自国の産業を育てるためにとる貿易政策をいう。
保護貿易のやり方として、２つあります。
・関税で輸入量の制御
・政府や業界団体が輸入を独占したり様々な国内基準を設け、貿易数量を規制(非関税障壁)

２．アメリカ憲法にある万民平等の思想(北部）と奴隷の犠牲の上に成立する南部の社会の乖離
北部にも奴隷がいて、北部の経工業済を大きく支えていることはなかったですが、南北戦争中におけるリンカーン大統領の奴隷解放宣言では南部のみの奴隷解放のみで、北部は対象外だったことを考えると、この原因は１の原因ほど大きな要因ではなかったと考えられます。

 

ちなみに、北部の奴隷解放をいわなかったのは、もし北部も対象にすれば北部で脱退する州があると想定したためです。

 

結局、リンカーン大統領は奴隷解放という人道的なことは戦争に利用した形になります。

以上、黒人奴隷貿易、南北戦争を整理すると以下のことが言えると思います。
①黒人奴隷貿易を含めた三角貿易で工業化を急速に発展させたイギリスに対し、発展途上のアメリカ北部はなんとかしたかった。

②イギリスにはかなわないので、まずは保護貿易に自国強化したかった。

③しかし、アメリカ南部は工業製品の原料（綿花など）をイギリスに輸出することで莫大な利益をあげて、自由貿易の恩恵を得ているため、保護貿易にするのは困難。

④北部はアメリカを保護貿易にするためには南部と征服しないといけない。
→南北戦争(1861～1865年）に発展

⑤南部の奴隷をなくせば、奴隷兵士がおらず戦争に有利になり、さらに南部の経済は崩壊とともにイギリスにも綿花などの原料不足（イギリスで消費される綿花の８０％を供給）という打撃を与えられる。

→南北戦争中の1862年9月22日にリンカーン大統領兼北軍最高司令官による奴隷解放宣言１部(予告版）、2部は1863年1月1日

 

⑥南部を征服することによって国内産業保護的な政策をとる。

⑦アメリカ国内における工業が飛躍的に発展し、アメリカ版産業革命が起こる。

⑧自国強化で第二次世界大戦で勝利し、世界の超大国となり、自由貿易に転向

参考ですが、リンカーン大統領兼北軍最高司令官は奴隷解放宣言で憲法違反をしたと考えられることもあります。

なぜなら、アメリカ合衆国憲法では、奴隷制があり、憲法修正なく、奴隷解放を宣言したからです。

奴隷解放宣言の意義は整理してみました。
・国内外の世論の支持
この支持を得て戦いを有利に展開することを狙いました。

　これにより、南軍（連合国）がイギリスやフランスから援助を受けようとする試みは失敗に終わりました。

・南軍の「戦争のエンジン」となっていた奴隷兵士解放による戦力ダウン
奴隷兵士の役割は食糧をこしらえたり、兵隊たちの制服を縫ったり、線路を修理したり、農場や工場や鉱山で働いたり、防御用の壁を建てたり、病院などで労働したりしました。

・捕虜にした南軍黒人奴隷兵士の雇用
1850年の逃亡奴隷法は、”軍逃亡中の奴隷を発見したら、かくまわずに主人に明け渡さなければならない”とあり、基本的に捕虜となった黒人奴隷は敵に返送しなければないが、奴隷解放宣言で、北軍は捕虜となった南軍黒人奴隷を解放した後、北軍が雇用し、約20万人の南軍黒人奴隷が北軍兵士になりました。

・南部の経済の弱体化
南部の「経済のエンジン」となっていた奴隷(1860年の国勢調査では約400万の黒人奴隷。アメリカ全人口の約14％占める）を解放させることで、綿花などの生産力減、コスト増を狙った。

・世界の工場イギリスへの経済打撃
イギリスへの原料（綿花など）の輸出激減による製造量減、製造コストアップ

このように奴隷解放宣言は北軍勝利のために利用されていたため、奴隷解放宣言を発したリンカーン大統領は、奴隷解放宣言が一時的な戦争の手段と見なされるかもしれないことをおそれ、永久的な奴隷制度廃止を保障するため、憲法修正を指示しました。

 

　アメリカ合衆国憲法修正第13条は、第38
アメリカ合衆国議会により1865年1月31日に各州の議会に提出され、南北戦争終結1865年4月9日を経て、1865年12月18日のアメリカ合衆国国務長官ウィリアム・ヘンリー・シーワードの宣言で、36州のうち27州の議会により修正条項が布告されました。

南北戦争と黒人奴隷貿易の関係を整理してみると次のようになります。
・黒人奴隷貿易によりアメリカ南部に奴隷が輸入され、農業が発展する。

・農業発展地域の南部と新興工業発展途上の北部との格差拡大

・北部は優位にたつため、戦争して自由貿易の南部を打倒し、保護貿易政策が必要。

以上から黒人奴隷貿易で南部に奴隷が輸入されなければ南部の発展は北部より遅く、北部は簡単に保護貿易政策をとれ、南北戦争には発展しなかったと言えると思います。

このようにみれば、南北戦争は「北部による侵略戦争」と考える見方もありかもしれないです。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。