ブータンの光と影③~GNHからみたブータン問題とは?~

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 以前の記事で、「ブータンの素晴らしいところ、特筆すべきところ」について紹介しました。
 http://ameblo.jp/la-luna-sarah/entry-11986820704.html
 
 今回はブータンの素晴らしいところ、特筆すべきところの3つ目の「GNH(国民総幸福量)の提唱」の光と影について考えたいと思います。
 GNHとは、国民総幸福量(Gross National Happiness)の略称で、先代の四代国王が世界で初めて「国民全体の幸福度」を表す指標として、提唱
しました。
 
 ブータンは小国でGDP(国内総生産)では最貧国の1つで、GNH提唱以前は鎖国(1962年に解除)もしていたため、国際社会では目立たない国でした。
 
 ブータンはグローバル化とGDPで国の豊かさを評価される不利な状況をかえるべく、また国力の強化のため、幸福量によって国を評価していく指標を考えだしたのです。
 
 GDPを大きくしても国としては、犯罪、失業、格差社会など多くの問題があり、国の評価や目標に行き詰まりがありました。
 
 そこで、新しい国民総幸福量により、GDPで行き詰まったフランスをはじめとする世界各国が注目し、ブータンは国民総幸福量の提唱国として、世界の舞台へ躍り出たのでした。
 
 2005年のブータン政府の国勢調査ではブータン国民の97%が幸せという結果で、世界に世界一幸せの国として有名になりました。
 
では、ブータンのGNHとはどんなものなのでしょうか。
 
GNHの4つの柱のもと、9分野にわたり72項目の指標があります。

 
4つの柱は簡単に説明します。
1.持続可能な公平な社会経済開発
 格差を生まない経済政策と差別を生まない社会
 
2.環境保護
 自然との共生
 
3.文化の推進
 伝統技術や習慣、言葉を大切にする
  
4.良き統治
 住民が意思決定に関わる民主主義

【前提条件】
・経済成長が第一ではなく、国民の幸福を最大にすることが第一 
・自然環境や独自の宗教・伝統的文化を守り、のちの世代に伝えることが大前提
  
このGNHの提唱、幸せの国として、ブータンは脚光を浴びました。
 
GNHはブータンにとってなんで必要だったのでしょうか?
 
その理由は色々あると思いますが、次の5点をあげます。
 
①GDPの増加
②独立の維持
③国家のアイデンティティの強化
④One nation,One Peopleの構想の実現
⑤グローバル化
 
まず、みんさん、4つの柱の内容のバランスとれていないと思いませんか?
 
良き統治っていえば、他の3つの柱である①持続可能な公平な社会経済開発、②環境の保護、③文化の推進が含まれる内容ではないでしょうか?
 
また、持続可能な公平な社会経済開発とえば、持続可能の中に環境保護が含まれる内容ではないでしょうか?
 
なぜこのような内容レベルの不揃いになってしまってるのでしょうか?
 
 私見ですが、幸福を最大化を建前に政府が実施したいことをあげているからではないでしょうか?
 
これから4つの柱のそれぞれの影について考えたいと思います。

1.持続可能な公平な社会経済開発の影
 なぜ国の評価は幸福量といいながらも、豊かさには物やお金は欠かせません。
 そのため、このような持続性のあるGDP増大をいってるのですが、経済開発して、幸せが損なわれないのでしょうか。
 それを考える上で必要なことはなぜブータン人は幸せと思っている人が多いかです。
 これについては過去の次の記事を読んでいただけたらと思います。
 http://ameblo.jp/la-luna-sarah/entry-11987143904.html
 
 経済開発することで、モノ、お金による快楽・幸福に興味をもつようになり、今の先進国の課題に近づいており、幸せ度が低下すると考えてい
ます。
 ブータンが幸福感が高かったのは物欲・金欲になる環境になかったことが大きな理由で、経済発展、グローバル化というパンドラの箱をあけてしまったように思います。
 
 すでに首都ティンプーでは都会化して、若者など人々が田舎から移住するようになり、ティンプーでの住宅不足、失業、薬物乱用、アルコール性肝疾患(病院の上位の死因)
などの問題とともに、土地持ち・賃貸住宅などの不動産、商売人が裕福になり、格差社会がひろがっています。
 
 あとはブータンの国家歳入は40%水力発電(インドへの売電など)、30%が外国(インド、日本、スイス、デンマーク、オランダなど)の援
助で、水力発電所はインド、日本につくってもらっています。
 ご参考として、ブータンの賢さは援助先を考えています。大国の援助は独立の危機リスクが高いため、中国、アメリカ、ロシアなどの援助はないです。
普通の国なら中国の援助をうけ、中国人移住を受け入れ、道路をつくってもらってる国は多い中、ブータンは国際社会でうまくたちまわっています。
 
 
 国家歳入のほとんどを外国に頼っているブータンはどのように持続可能な経済発展ができるのでしょうか。
 
 今の状況だと、外国に水力発電所、道路、橋を建設してもらって、それからの歳入増で、海外からの援助を減らしていこうというように思います。
 
 それはなぜかというとブータン人は次の記事の後半の「影」の部分に書いてますが、仕事には熱心ではなく、二次・三次産業での歳入の増はそれほど見込めない、ま た外国企業も参入してもブータン人との仕事は難しいと思います。
 http://ameblo.jp/la-luna-sarah/entry-11988609368.html
 
 また水力発電所、道路、橋の建設・土木の従事者はほとんどがインド人で、ブータン人への雇用・給金にながれていないことも気になります。
 
 というのもブータン人は建設・土木従事者はプライドが高いブータン人は自分たちがする仕事とは思っていないようです。
 
 失業率の高いブータンならインド人にさせず、ブータン人が働いてほしいです。
 
 以上から、私見ですが、ブータンの社会発展は水力発電、金持ち相手の観光関連、道路・橋などの流通向上による経済発展がメインのように思 い、ブータン人による経済発展はあまりなく、残念に思います。
 
2.環境保護の影 
 ブータンを旅行してみて、経済開発として感じたことは水力発電所、道路、橋の建設でした。
 
 日本ではダム建設で環境問題になっていますが、ブータン旅行中、いろんなところで建設してて、環境保護はどうなるの?とも思いました。
 
 ブータンでは環境問題よりは国家の水力発電建設などによる歳入を増やすことを優先しているように感じ、”国土の60%以上の森林面積を保つ 方針”を守ればいいやで、将来のことを考えているのでしょうか。
 
 ブータン人は農耕民族で、お金やモノとは隔離された社会でしたので、将来を考えるという習慣はあまりないのですが、政治家は将来の見通しをどう考えるのか、気になります。

 たしかに60%以上を守ればいいのですが、2012年で69%になっていて、それほど余裕はありません。
 
 また、ブータンは山ばかりなので、60%の目標では低いレベルだと思っています。
 
 というのも、日本でも森林伐採が問題になっていますが、日本の森林率は66%なのです。
 
 2012年の森林率69%ってあまり高くないと思われる方もおられると思います。
 
 今後、植林も増えていきますが、伐採される木と植林される木は種類(育ちが早いなど)、場所も違うのですから、ブータンの自然は変わって いくことが想像されます。
 
3.文化の推進
 政策の中の、国家のアイデンティティの強化、One nation One Peopleの構想、国家統合政策の実現になり、文化の推進は次のことを実施しています。
①主流派「ガロン」の言語である”ゾンカ語”を公用語化
 また、教育現場ではネパール語の禁止とし、英語を共通語として教育。

②「ガロン」の伝統衣装がブータンの伝統衣装として全国民※に着用義務化
※警察・軍などの制服職、外国人、ネパール系住民、固有の衣装を持つ少数民族は除く。
 
③「伝統文化による安全保障」の名の下で国籍法が厳格化
この話の予備知識として、ブータンの民族構成が必要なります。ブータンには主に3つ(小分類では5つ)の民族集団があります。
1)ドュクパ西・中・東部の3つに分かれる)
 ①ガロン(西部)
 ・チベットから移住してきたブータン西部の住民
 ・母語はゾンカ語(中央チベット語の南部方言に分類され、現在の国語)
 ・チベット仏教のカギュ派ドゥク支派を信仰
 ②ブムタンパ(中部)
 ・チベットから移住してきたブータン中部に居住
 ・母語はムタンカと呼ばれるゾンカ語の一種
 ・一般的に西部のガロンに包括されることが多い。
 ③ツァンラ(東部)
 ・ミャンマー・アッサム地方を出自とする東部の住民
 ・チベット仏教(主にニンマ派)を信仰
 ・ツァンラ語(シャチョップカ語)
  ※チベット・ミャンマー語派の中でもビルマ語系に近い
2)ローツァンパ
 ・南部に居住するネパール系住民
 ・ヒンドゥー教徒
 ・インド=アーリア系のネパール語
3)少数民族 人口比10%

 このような5つの民族ではありますが、GNHは1つの民族(ガロン)である言語、伝統を文化の推進としているのです。
 

 GNH提唱当時はガロンは人口比20%ぐらいといわれ、他の80%の国民が話せないゾンカ語を国語にするって変に思いませんか?
 
 ドゥクパの仏教徒と異なるヒンドゥー教徒のローツァンパですが、ネパールからの移民が増え、GNH提唱当時は人口比40%にもなっていました。
 
次にブータンの政策に大きく関与したブータン周辺国の状況を整理します。
■チベット
チベットは中国の属国だったということで、中国はチベットに侵攻し、1951年に中国支配下となった。
 
■シッキム王国
ネパールとブータンの間に位置し、ネパールからの移民が75%以上占め、民主化をすすめたことで、ネパール系の勢力が増し、チベット系とネパール系の間で生じた混乱の
収拾のため、1975年にインドが侵攻し、インドに併合され、インドシッキム州になった。
 
 この2国の状況から、ブータンもインドか、中国に併合される可能性が高まったため、ブータンはインドからの侵攻のリスクをなくすため、文化の推進や保護を名目として、多くのローツァンパ(ネパール系)の国籍を剥奪して、国外に追い出したのです。
 多くの難民をうみ、国際的な大問題に発展しました。
 これは南部問題といい、次の記事で詳しく説明したいと思います。
 
 以上のように、GNHの柱である文化の推進は独立維持として重要な位置づけにあります。 
 
 
4.良き統治
 住民が意思決定に関わる民主主義ですが、1985年の国籍法でネパール系の国籍はく奪や1992年の「国家治安法」が施行で五人以上の集会を禁止
など民主主義からほど遠いように思います。
 
 「国家治安法」では『国の内外で、国王、国、国民にそむく活動や発言、それを幇助した者については、厳罰に処する』ことが定められ、国家転覆・反逆罪は死刑か終身刑、幇助(ほうじょ:実行犯の手助け)も同様に死刑か終身刑とされ、国外でもNGとなり、言論の自由が制限されています。
 
 ブータン旅行した際も、ガイドさんは政府の悪口は絶対いいませんでした。
 
 また、政府などの悪口をいうと周りから白い目でみられるようです。
 
 
【ご参考】ブータンの幸福度についてです。
 国連が作成した2013年世界幸福度報告書(World Happiness Report)ではブータンはランキング外です。
 その理由は予想ですが、この人権問題があるためと思います。
 この作成会議の議長はブータン首相なのですが。。。
 
 また、2005年のブータン政府の国勢調査ではブータン国民の97%が幸せという結果ですが、その数値には”からくり”があります。
 なんと、選択肢が3つのみで、「とても幸せ(very happy)」、「幸せ(happy)」、「あまり幸せでない(not very happy)」で「あまり幸せでない」を選択しなければ、すべて「幸せ」になるという仕掛けがあります。
 
 
 こういった情報を世界に情報発信するブータンはどう思われるでしょうか?
 
 ブータンはイメージ戦略やマスメディアとの関係づくりも優れていると思います。
 
 この批判をうけて、ブータンは2010年の国勢調査ではポイント方式(0~100%)にして66%以上を幸せとした結果、対象7142人(人口の約1%)の40.8%が幸せとなりました。2005年は97%でしたが。
 ちなみに0~100%は次の4段階に定義しました。幸せに分類しなかった「少し幸せ」が48.7%で約半数を占めていることも注目するところです。
 77~100%:とても幸せ(deeply happy)
 66~76%:まあまあ幸せ(extensively happy)
 50~65%:少し幸せ(narrowly happy)
 0~49%:幸せでない(unhappy)
 
 以上、GNHの光と影について説明しました。みなさんは幸せの国ブータンをいかが思われましたでしょうか?


■つづきの記事は次をクリックしてください。

 http://ameblo.jp/la-luna-sarah/entry-11993481191.html



■2015年ブータン旅行記の記事は次をクリックしてください。

 http://ameblo.jp/la-luna-sarah/entry-11975846586.html

 

  
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コメント

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