2023年全国高校ラグビー選抜大会決勝戦の勝因について
はじめに
決勝戦「桐蔭学園vs東福岡」を観て、今回なぜ桐蔭が勝利したのかを分析し、レジリエンスの視点で見立てました。どこにもなく詳しく説明しておりますので、ぜひご覧ください。
(※レジリエンス:耐久力、再起力、困難をしなやかに乗り越え回復する力(精神的回復力))
日本代表ラグビーではレジリエンス視点がありますが、高校生が勝利以外に今後の将来(ラグビーだけでなく社会でも)があるためとても重要なので、高校ラグビーでレジリエンス練習をとりれいれてほしいと思っています。
(この記事の作成に3日もかかりました笑)
試合流れと概要
前半では東福岡のラックでの攻防が激しく、桐蔭を自陣でプレーさせず、圧倒していました。2つのトライを決め、12-0となります。
この流れから48ー12ぐらいで東福岡が勝つかもしれない、と思っていました。
ところが、この後東福岡は不運もあるミスなどで桐蔭が得点を重ねていくと、徐々に最初の勢いは消え、前半の終わりには12-13と桐蔭に逆転されます。
スコアは34-19でしたが、内容からするともっと点数がはなれていたと思いますが、そこは東福岡の実力で15点差ですんだように感じました。
ここから、解説者野澤さんのコメントを紹介しながら、筆者の見立てを入れていきます。
野澤解説者のコメント
◎コメント1
桐蔭のプレーはシンプルとういか、、、ここまで精度を高くしてやるっていうのが桐蔭のラグビーです。こういうラグビーをやって大学に来てくれると、やっぱり大学側は嬉しいでしょうね。いろいろなラグビーに対応しやすい。スキルがついてますからね。
※ちなみに準々決勝と準決勝に行きましたが、野澤さんはスタッフ席で観戦されてました。
◎コメント2
桐蔭学園のアタックはちょっと見えやすいですね。
◎コメント3(試合終了後)ほんとに難しいストラクチャー(アタックもディフェンスも“陣形が整った状態”)があるとかではなくて、ほんとに幹の部分ですかね。
ボールをキャッチ・パス・ブレイクダウン、タックルと、そして全員がサボらず動き続ける
ほんとに太い幹をつくってきているな、という感じですね。
実況:つまり桐蔭学園の専用ラグビーではなくて、どこでも通用するようなシンプルな幹があるっていうことなんですね。
桐蔭学園の勝因は?~筆者の見立て~
筆者は桐蔭と東福岡の違いは”レジリエンスの差”にあると思います。
桐蔭は前半、一時東福岡に怒涛の勢いから圧倒的な優位に立たれます。しかし、その状況を冷静に受け止め、東福岡のミスをついてトライまでもちこみました。
一方、東福岡はミスをして流れが悪くなるにつれ、本来のプレーができなくなり、再起することができなくなってしまいました。
ここから言えること、それは不利な状況時の対応が勝敗を分けたと言えます。
これがレジリエンスというもので、耐久力、再起力、困難をしなやかに乗り越え回復する力(精神的回復力)です。この試合に当てはめてみます。
- 耐久力:試合の流れが悪くなりそうな時、これ以上試合のの流れを悪くならないように踏ん張れる
- 再起力:試合の流れが悪くなった時、各選手が修正して、試合の流れを元に戻せる
- 精神的回復力:試合中メンタルが落ち込んでも、各選手は平常の精神状態に戻せる
この差が明暗を分けたのです。
この根拠は0-12で桐蔭は負けていましたが、普通ならトライを取りにいくのではないでしょうか。
桐蔭はペナルティーゴール(PG)3点を選択したのです。これこそ、前半のすぐの2トライで桐蔭は0点の中でも、精神的に崩れていない点です。
また10-12で、桐蔭は2点差でもトライか、PGの選択で、PGを選んでいます。
後半は逆転できるという自信があるからではないでしょうか。
前半はかなり負けていても攻撃はあまりせず、着実に点を取る戦い方はどこかのチームで観たことありませんか?
そうです。ワイルドナイツの戦い方です!
さらに桐蔭がすごいことは、東福岡の戦術を早く見抜き、前半は最初の2トライからトライを許さなかったことです。普通ならワンサイドゲームになりますが、桐蔭の修正力(レジリエンス)が高いことが分かります。
他のスポーツと比較したラグビーの特徴
ラグビーはボールを持っていると反則しやすく、さらに簡単なミスでも反則すると攻守交代となるスポーツです。つまり、「反則を取られてしまう=相手に陣を取り返されるチャンスを与えてしまう」になります。ラグビーは陣地争いのスポーツなので、反則が大きく陣取りでに影響します。これは他のスポーツにはないラグビーの特徴でしょう。
ラグビーは陣取りゲーム!これでラグビーがわかる
このようにラグビーは1人のミスが反則につながるのでチーム全体に与える影響が大きいのです。そのため、ラグビーでは規律(ディシプリン:ルールを守る・反則をしない)が重要で、勝敗を分けるとも言われています。
つまり、ラグビーは目に見える身体的なフィジカルだけが重要なのではありません。同じくらい重要なのは、目に見えないメンタルの力です。それも全員必要です。

ラグビーはボールを前に落としただけで、攻守交代になり、それで陣地が動いてしまいます。刻々と変わる陣地に自分たちがどう適応していくのか。個人の能力・スキルアップ(フィジカル・メンタル両方)とそれが全員であることが勝利のための条件であることが理解できるのではないでしょうか。
そう考えると、高校ラグビーは選手の力の底上げが重要で、全体のこと(戦術・作戦などの立案・実行練習)よりは、個の能力・スキルアップに集中した方が勝率は上がります。
※大学・リーグワンでは全選手のレベルが高いので、全体底上げという要素が薄れていき、スーパースターの重要性が増してきます。
両校のプレーの違いについて
上述した野澤さんのコメント2「桐蔭学園のアタックはちょっと見えやすいですね」から、筆者は桐蔭は戦略・戦術はシンプル化して、全体練習時間を少なくして、個の能力・スキルアップに練習時間をあてていると考えました。
毎日新聞での藤原監督のコメントでは
ベーシックの深いところ、細かい動作のところをやりこんできた」
といわれているように、反則しないための基本プレーを徹底的に練習してきたのだと思います。
一方、東福岡が得点したプレーでは、桐蔭のディフェンスのマークをかく乱させ(アタックしそうな選手は実はおとりでアタックしてこない)、桐蔭にマークされていない選手がパスを受けてディフェンスを突破しました。最初からこれを繰り返してきた東福岡は、(基本プレーの徹底時間を減らして)全体の練習にも力をいれていたと思います。一方、桐蔭はシンプルな攻撃をしていました。
東福岡は前々回の花園での敗戦の反省から(選手たちが考えたようです)、前回の花園に向けての練習では以前多かった攻撃練習を大幅に減らし、ディフェンスの練習を多く増やして(想像では7割ぐらい)、圧倒的な強さで優勝しました。
ここから、筆者の両者の練習イメージを想像してみました。
・桐蔭 攻撃・防御の基本プレー・細かい動作の練習(10割)
・東福岡 攻撃(作戦実行):3割? 防御7割?
おそらく両校の実力は同じくらいだと思います。ただし、試合展開が悪くなった時にレジエンスが弱い(実力がだせない)といきなり劣勢になってしまいます。
東福岡:ハイリスク・ハイリターン(試合の流れが悪くならなければ圧勝できる。しかし試合の流れが悪くなれば(相手に戦術に対応されてしまうなど)負けてしまいやすい)、観客には楽しいラグビー。
桐蔭:ローリスク・ローリターン(大量得点はなく、失点も少なく安定した勝利が得られる(勝率が高い)。観客にはわかりやすラグビー。
高校ラグビーはシーズンを通して戦うことはありません。つまり、1点差でも勝てばよいことになります。勝利を目指すためには、ローリスク・ローリターンのレジリエンスの強いチームづくりが大事でしょう。また、高校生がラグビー以外でも社会でも活躍できると思います。
ちなみにプロのリーグワンであれば、異なります。シーズンを通して戦うこと、かつ3トライ差以上での勝ちは追加で1点を付与されるので、「チーム全体」での攻撃のイメージ化・共有はとても重要となります。
まとめ

桐蔭学園の勝因は”高いレジリエンス”です。
高校ラグビーはシーズンを通して戦うことはありません。つまり、1点差でも勝てばよいことになります。勝利を目指すためには、ローリスク・ローリターンのレジリエンスの強いチームづくりが大事でしょう
また、高校生がラグビー以外でも社会でも活躍できると思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。


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