ヒトにもっとも近いボノボとの出会いと進化の歴史

②中央アフリカ:コンゴ(サプール・ボノボ)
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2017年2月にコンゴ民主共和国、コンゴ共和国を旅行しました。

コンゴ民主共和国旅行のメインは「ボノボに会うこと」でした。ロラ・ヤ・ボノボというところで見れました。

ボノボ(Pan paniscus)は、以前はピグミーチンパンジーと呼ばれ、ヒト科チンパンジー属に分類される霊長類で、ヒトにもっとも近い動物です。

ボノボは「セックスであらそいを平和的に解決するサル」として知られ、限りなく人間に近い遺伝子を持つ類人猿(98%以上)です。
ヒトはゴリラと656±26万年にボノボ・チンジャンジーとは487万年前±23万年に分かれ、ボノボ(ピグミーチンパンジー)とチンバンジーは233±17万年前に分かれました。(出所:国立遺伝学研究所)

化石人類であるアウストラロピテクス(南アフリカ共和国)は約400~200万年前ですから、ボノボ誕生は最近ですね。
ボノボはヒトの平和的なところを、チンパンジーはヒトの好戦的なところを引き継いでいます
ボノボは特にヒトに似ているところが多く、例えば二足歩行、メスが強い、共感感情、平等意識などがあります。
今回は、ボノボとチンパンジーを比較し、ボノボの特徴を明確にし、ボノボとヒトの似ているところなども考察したいと思います。

最初にボノボ写真。子供はヒトに似てませんか?

■ボノボとチンパンジーの比較表
※スマホの方は横向きにして見てください。縦向きではチンパンジーの欄が表示されません。

比較項目 ボノボ チンバンジー
子供の顔色 黒色(大人も黒色) 明るい肌色(大人は黒色)
二足歩行 食べ物をもつと二足歩行 あまりしない
体長
体重
オス73-83cm、メス70-76cm
オス39kg、メス31kg
オス85cm、メス77.5cm
cオス40  60kg、メス32  47kg
会話 英語や手話を理解 ボノボより低い
オスのサバイバル能力 低い(母親に守ってもらう) 同盟・連合・裏切りなどにより地位向上
群れ内関係 平和(親和的) 頻繁にケンカ
他の群れとの関係 平和(親和的) 敵対的
メス同士の関係 メス同士で遊動 メス同士は疎遠
交尾・発情周期
発情期の長さ
頻繁(出産1ヶ月前~出産1年後以外)
大人期間の約27%
4~6年周期
大人期間の約4%
発情と排卵の関係 関係なし(排卵なしでも発情:ニセ発情) 排卵の約2週間前から発情
メス順位 年功序列(メス) 明確でない
オスとメスの地位 メス権力社会 オス権力社会
オス順位争い ほとんどない 頻繁

 

■ボノボがヒトに似ている点での比較

オスの大事なこと メスに気に入られること 他のオスより強いこと
同性の性行為 オス同士・メス同士あり なし
交尾の意味 繁殖と関係良化・喧嘩防止 繁殖のみ
好き同士の交尾 頻繁 少ない。
メスの好きな体位 正常位 選択権なし
共感感情 あり(他には人間のみ?) なし
オスとメスの関係 メス連合でオスより強い 圧倒的にオスが強い
性行為の選択権 メス オスが一方的
マザコン(オス) 多い(母親にベッタリ) いない

ボノボの一番の特徴は性行動(交尾、尻つけ、ホカホカ、キス、オーラルセックスなど)にあると思います。
ボノボは同性同士の性行動があり、オス同士はお互いにお尻を向け合い(尻つけと呼ばれる)、メス同士は性器をこすりあう(ホカホカと呼ばれる)ことをします。
この同性同士の性行動は全動物で一番多いといわれています。
なぜ交尾(セックス)や同性の性行為が多いのでしょうか。
ヒトはケンカになりそうになると、会話をしてケンカが起こらないようにしています。
一方、ボノボは会話ではなく性行動によって平和を保ちます。

「セックスであらそいを平和的に解決するサル」と言われる由縁です。
また、オスは「メスに気に入られること」を重要視しており、チンパンジーのようにオスの一方的なセックスではなく、メスに食べ物をあげたり、やさしくしたりして、セックスをします。
さらにボノボは父系社会で、年頃になったメスは群れから離れ、別の群れに入りますが、別の群れにはいったメスは、これからよろしくお願いしますと、挨拶代わりに、群れ内のオス、メスと性行為をします。
ボノボは性行為は通常、オーガズムには至らず、コミュニケーションが主眼で、敵意がないことを伝える、興奮を静める、挨拶する、緊張を和らげる、絆を深める、食べ物を分けてもらう、仲直りをするといった目的で行います。
また、単に快感を求めて行う場合や、こどもの遊びが性交の練習になっている場合もあります。
性行動はコミュニケーションという意味あいがあるため、ボノボは交尾だけでなく、キス、オーラルセックス、ペニスフェンシングなど性行動は多様です。
このように性行動が平和になるカギで、これを実現したのはメスの発情期が長くなるという進化があったことです。
チンパンジーのメスは発情期は4~6年周期で、排卵前にはじまる発情期以外にセックスをしません(セックス周期が4~6年)。
したがって、チンパンジーの群れ内で交尾できるメスはせいぜい1頭で、多くのオスはその発情したメスを狙い、オス同士で乱闘が起こります。
さすがにオスボス一頭だけでは発情したメスを独占できませんので、上位(3頭ぐらい)のオスが連携して他のオスの交尾を邪魔します。
したがって、オスは自分の子孫を残すには上位のオスになることになります。
そのため、チンパンジーは好戦的で発情したメスを独占します。
たまに上位でないオスは発情したメスをうまく群れから連れ出し、駆け落ちをしたりします。1日でおわるものもあれば1週間以上続くこともあります。
チンパンジーは排卵の約2週間前に発情しますが、ボノボは排卵がなくても発情する(ニセ発情といいます)進化を遂げ、出産1ヶ月前~出産1年後以外は発情します。
そのため、発情したメスがたくさんいるため、オス同士で争いをすることなく、交尾できるようになりました。
チンパンジーのメスは子育てしているときは発情しないため、発情を促すために子殺しして、その子供を食べたりもします。
ボノボは発情期が長くなったため、チンパンジーのような子殺しが不要となり、子殺しが発情期がながくなるという進化の一要因として考えられます。
ボノボもチンパンジーも発情したメスは性器がピンク色にふくれあがり、大きいときには頭や風船ほどに大きくなりますので、オスは遠くからでも発情しているかどうかすぐにわかるようになっています。
一方、約500万年前にボノボ・チンパンジーと分かれたヒトでは、女性性器がふくれあがるという発情サインがなくなり、その代わり女性はいつでもセックスできるという進化をしました。
ヒトの男性は女性の発情サイン(ボノボなら性器がふくれあがる)が不明確になったため、女性に発情するポイント(顔・胸・お尻など)が多様化していくという進化がおこりました。
また発情期をなくした女性は男性と常に性交渉可能になり、特定の男性をパートナーとして食物の提供と保護が得られるようになりました。

次にボノボのランク付けの話です。
メスは発情期が長くなることで、オス同士が争いがなくなり、チンパンジーのオスより体格や力が小さくなり、メスとの戦闘力の差が縮まりました。
またメスは発情期が長いため、セックスをだしにオスから食べ物をもらったり、やさしくしてもらったりとメスの地位がオスより高くなりました。
メス同士の性行為(ホカホカ)で平和的でもあるため、年功序列で群れのボスは最長老のメスになっていることが多いです。
メスは立場が強いといっても体力的にはオスに負けるため、日ごろのホカホカの友好関係によって連合をくみ、悪いことをしたらオスをメス連合で仕返しをします。
ヒト社会では家庭や職場で妻・女性を怒らせないように気をつかう男性って、、、発展してきたヒト社会ですよね。
ということはボノボの方が100万年以前にそういった社会になっていたということで、ボノボ社会はヒト社会の改善・発展に参考になることが多いと思われます。
そいうった研究は京都大学霊長類研究所でも行われています。
メスが地位が高いということで弱体化したオスは守ってもらえるのは母親になりますので、オスはマザコンが多いのです。
オスのボスは結局はメスボスの息子になります。

最近、LGBT※の差別や権利がいろんなところで議論されるようになった日本ですが、100万年以上も前からボノボ社会では今のLGBTの概念より、もっと先にあるように感じます。

※LGBT(エル・ジー・ビー・ティー)は GLBT(ジー・エル・ビー・ティー)とも呼ばれ、女性同性愛者(レズビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual)、性同一性障害を含む性別越境者など(トランスジェンダー、Transgender)人々を意味する頭字語です。

これまでの話でヒト・ボノボ・チンパンジーで発情というものが進化のポイントであることがご理解いただけたと思います。

ここからボノボ写真です。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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